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ナガサワ 三宿 cock-tail classic 10周年 Web-T 博物館 m-web.
★三宿Web20周年記念お祝いコメント頂きました!★
cock

 

wrote.2000.4.28
第一回 〜はじめに〜 
最近でこそ旨い酒が呑めるクラブは増えてきたものの、7・8年程前まではグラスを使っている店も少なく、氷店が扱っている工業的に製造された機械氷やフレッシュジュースを使っている店に至っては、本当に極わずかしかなかった。「音と酒」クラブに於いては当然切っても切れない関係ではあるが、「音が一番、酒は二の次三の次」という価値序列も否定できぬ定石である。クラブシーンに於ける酒へのこだわりが高くなっている今尚、相も変わらず見受けられる傾向である。音に関しては金を惜しまず(音響機材、DJなど)出来る限りいい物を提供しようとするが、酒になると、なるだけ金をかけずにばれない程度にそこそこの物でお茶を濁そうというのが、大きな風潮と言える。それはどこに原因があるのか?勿論色々な要因があるのだが、一つの要因として、飲み手側の酒に対する意識がいかんせん低いというところにあると思われる。今やコンビニエンスでも簡易カクテルが手に入るぐらい一般社会に於けるカクテルブームというものは着実に進歩しているのではあるが、巷の猫も杓子もDJブームというものに比べると、クラブフリークに於ける酒に対する関心がまだまだ低いのもこれまた事実である。勿論これも数年前に比べると格段に違って来ている事も事実ではあるが。飲み手側の求めるレベルが上がらなければ、それを出す店側のスタンスも変わらないのも当然である。今回から始まるこのコラムでは、私の酒についての独自の哲学を、約10年携わるナイトクラブというフィルターを通して語らせて頂くことにする。勿論、人の考えなど十人十色、「そりゃ違う」と感じる人もいるであろう。しかし、共感してくれる人や、これを機にクラブで飲む酒-カクテル-に興味・関心を持つ人が少しでも増える事を望みつつ、始めることとする。

 

 

 

wrote.2000.5.18
第二回 〜酒の味はバーテンダーで決まる〜
クラブに於ける酒のレベルが低い理由は、何も飲み手側の意識が低いというだけではない。それにあぐらをかいている店側の態度、しいては実質酒の責任者であるバーテンダーの意識のレベルの低さにも問題があると思われる。クラブの酒のレベルは格段と上がっては来ているが、正直なところバーテンダーのレベルに関してはあまり向上しているとは思えない。勿論、真剣にバーテンダーを目指している者にとってクラブという場は如何せん物足りなく感じる場であり、真にバーテンダーとしての情熱やプライドを持った人材がクラブには入ってこないという事実もそれに拍車をかけている。教育者の不在もそうだ。いくら本人にやる気があり努力しても、ちゃんとした教育者が居なければ我流に任せる事になり、ある程度まで行けば知識や技術も頭打ちしてしまうのがオチである。ところで、現在都内のクラブで一番バーテンダーのクオリティーが高いのはどこか?勿論、読者はWebだというのではないか?と予想されたであろう。本来ならば、私も自信を持ってWebだと言いたい所ではあるが、違うのだ。これはあくまで個人的主観だが、青山のMIXであろうと私は思うのである。オープン以来、酒のクオリティーの高さはご存知の通り周知の事実ではあった。以前発売された某クラブ雑誌でも、クラブで一番酒が旨い店はMIXだと掲載してあった。何故ここまで同店が他店より支持されるのか?それらは単なる噂の膨張では無い。勿論、店側の酒に対するスタンスもそうだが、やはりバーテンダーの差であると私は考えている。現在バーチーフを務める山本氏は、最近立ち上がった同店のホームページで酒のコラムを書いているのだが、それを読んだ瞬間にバーテンダーとしてのこだわり・情熱・心意気・プライドを強く共感した。酒に関するスタッフへの教育にも、同店はオープン以来長年に渡り疎かにはしてきていない。いや、ことクラブシーンに関して言えば、だんとつにしっかりとした教育管理をしてきているのでは無かろうか?ちなみにバーの設備や使っている材料などに関しては、我がWebも同店に対しても遜色はない。いや、ヘタをすればそれ以上の自負はある。陳列している酒の種類でも、遙かにWebの方が種類は多く扱っている。ちなみに、今や同店と同等もしくはそれ以上の設備や材料、酒の種類が多いクラブは他にも実在している。しかし、それらを生かすも殺すも、所詮最終的にはバーテンダー次第なのだ。勿論、いくら腕の立つバーテンダーといえど、最低限の設備・酒及び材料のクオリティーが無ければフォローのしようが無いのも事実ではあるが。余談だが、1年半程前同店にお邪魔した際、ブルドック(ウォッカのグレープフルーツジュース割り)を頂いたのだが、Webと一緒のレシピ・材料を使用しているにも関わらず、初めて他店に味的に負けたと痛感した事があった。何故か?細かい理由は敢えて伏せるとするが、やはり一言で言えばバーテンダーの差であった。旨い酒を出してやろうという気合いや情熱・こだわり、蓄積された知識・技術というものは、不思議と微妙に味に反映する。酒の味はバーテンダーで決まるのだ。

 

 

 

wrote.2000.6.8
第3回〜クラブバーテンダーとバーバーテンダーの違い〜
私の持論では、同じバーテンダーといっても、クラブのバーテンダーとバーのバーテンダーとは微妙な差があると考えている。それはまず捌くドリンクの数と、その日の客のほとんどの人間の目の前で作業をしなければならない事だ。これは微妙ではあるが実に大きな違いだと私は考えている。まず捌くドリンクの数だが、週末になればどこのクラブも百人単位の数の客が店に訪れる。例えば200人集客があり、ドリンクチケットを2枚配る場合、単純に考えても400杯ものドリンクを出す事になる。もちろん、バーが併設されている店もあれば、1つのバーカウンターで2人で出している所もあるので一概には1人で400杯ものドリンクを出しているとは言えないのだが。しかし、普通のバーで1日に出すドリンクの数が三桁に達す事など、例外を除けばまず無いと言えよう。余談だが、私が9年前渋谷のCAVEでバーチーフをやっていた頃は、当時の週末エントランス3千5百円でドリンクチケットを3枚、土曜日などは300人ぐらいの集客があった為、約900杯ものドリンクを1人で出していた。まぁ勿論、それだけの数を捌かなければならなかった為、カクテルの作り方及びクオリティーに関しては、お世辞にも高いレベルとは言えなかったのも事実ではあるが。しかしである、1日に900杯という数は正直言ってとてつもない数である。ピークの時は、右手でジントニックをステアし、左手でドラフトのビールを注ぐといった具合であった。基本的にクラブのバーでは、丁寧な酒造りは基より、多数の客を捌ききるスピードが要求されるのだ。バー出のバーテンダーがクラブのバーで働いた場合、繊細なテクニックや知識等は遙かにクラブのバーテンダーのレベルよりも上なのであるが、ことスピードに関してはやはり如何せん遅いのだ。しかも、それは時間が経ってもそれほど進歩がない事が多い。バーで身に付いたセオリーな知識やテクニック、そしてつまらない見栄やプライドが邪魔をするのだ。私独自の持論では、同じバーではあるとはいえクラブのバーにはクラブのバーのセオリーというものが存在すると考えている。それは時にはバーのセオリーから外れるとされる事もある。しかし、スピードを要求されるクラブのバーに於いては、酒の味に関わらない部分では省けるところは省き、混み合ってもそれに対応できるスピーディーなテクニックが必要とされるのだ。そして後述のその日の客数のほとんどの人間の目の前で作業をしなければならないという点だが、バーのバーテンダーの場合、基本的に客は着席してカクテルの出来上がりを待つ事がほとんどな為、そこそこ混み合い伝票が並んだとしても、ある程度のゆとりを持ち作業を行える。しかし、クラブの場合、ほとんどがキャッシュオンデリバリーで客がバーテンダーの目の前に立ち並ぶ為、週末ともなれば前述したスピードは勿論の事、何十人何百人という客と、毎回直接対話しオーダーを聞き、凝視されながら作業しなければならないのだ。これもバーのバーテンダーよりも、ある種労力やプレッシャーがかかる部分と言えよう。バーで修行を積んだバーテンダーが、言わば格下のクラブのバーで全てに於いて即通用するかというと、決してそうとは言えないのだ。

 

 

 

wrote.2000.6.18
第4回〜クラブバーテンダーはエンターテイナーでなければならない〜
CAVEのバーチーフをやっていた頃から、私の中にはクラブバーテンダーの三大要素というものを意識して酒作りに励んできた。その三大要素とは、美味しく・早く・かっこよくの三点だ。これこそが、私が考える理想のクラブバーテンダーの必須条件だと現在も信じて疑わない。しかも、この三点どれか1つを欠けてもダメなのだ。3つ出来る事が必須なのだ。勿論、これもあくまでも私が勝手に理想とするクラブバーテンダー像をイメージしての思想であり、最低条件に過ぎないという事もあらかじめ申し上げておきたい。まず「美味しく」という点だが、ついつい混み合い、急がなければという焦りから、味の部分を疎かにしてしまいがちなのも、クラブバーテンダーによく見受けられる傾向である。やはり飲食店である以上、まずは第一に味の部分には気を配りたいのは定石である。そして前回の項でも触れた「早く」の部分だが、やはりいくら美味しい物を提供しても、作業の工程が著しく遅ければ、客はそれだけで酒を飲みたいという欲求が殺がれる。同時に、イライラ感から味にも集中出来なくなるという結果にも陥る。そして、最後の「かっこよく」という部分だが、やはり大多数の客の目の前で作業を強いられるクラブバーテンダーは、早く作るという工程の中にも、魅せるという部分が絶対的に必要だと思うのだ。ある時期、美味しく・早く作る事がイコールかっこよく見えるという方程式が成り立つのではないかと考えた時期もあったが、やはり究極のかっこよさとは美しさだと私は考えるのだ。無駄の無い動き、作業工程、そして同じ早さ・動作にしてもメリハリや加速を付ける事で、一連の動作にインパクトを与え、熟練してくるとそれが美しさに変わるのだ。大袈裟に言えば、芸術とも言える動作になるのだ。それは、プロ野球のイチロー選手のバットスイングにも通ずる部分がある。彼のスイングは、他のプロ野球のバッターの誰よりも美しい。芸術をも感じさせる。彼のスイングは、ゆったりとしたバッティングホームからインパクトの直前に瞬間的な体重移動をし、人並み以上の素早いスイングでボールを捉えるのだが、これも前述のメリハリと加速による視覚的効果が、美しく見せる要因だと考えられるのだ。あと、作業工程のかっこよさは勿論なのだが、自分のビジュアルというものも重要なポイントだと言える。それは、必ずしもかっこよくなくてもよい。自分のキャラクターを理解し、その個性を自分なりに表現すれば良いのだ。バーのバーテンダーとの違いはここにもあるのだ。クラブの場合、スタッフは私服で働く事が非常に多い為、クラブスタッフは自分で好きな格好が出来、大いに自己表現が出来る環境にあるのだ。特にバーテンダーの場合、その日のほとんどの客と接する事は勿論、多数の煌びやかに光る酒のボトルに囲まれるという人一倍目立つポジションに立っているのだ。DJがダンスフロアのスターだとすれば、ことさらバーテンダーはバーフロアのスターなのだ。全ての要素を総括して言える事は、クラブバーテンダーはエンターテイナーで在るべきなのだ。

 

 

 

wrote.2001.6.11
第5回〜カクテルってなんですか?〜
約1年振りに再開のC.E.S.。前回までは、作り手側の意識について書いたが、今度は飲み手側の意識改革を促すべく、私独自の切り口で、あまり知識の無い方でも解りやすく書いてみたいと思う。さて、まず問題定義したいのは、カクテルとは?という簡単な問いだ。まず、カクテルの知識があまり無い者は、カクテルという物をとかく難しく考えてしまいがちだ。カクテルとは、名前が付いている飲み物(メニューやカクテルブックなどにも掲載されている様な飲み物など)だと勘違いされているのではないか?簡単に説明してしまうと、何かと何かを足してしまえばそれはもう既にカクテルなのだ。例えば、焼酎にレモンジュースを入れた物もカクテルと呼べるし、大袈裟に言えばオレンジジュースとグレープフルーツジュースを足してしまえば、それもカクテルと呼べるのだ(この場合厳密にはノンアルコールカクテルと言う)。ちなみにカクテルを英語で表記すると、Cocktailと書く。直訳すると"オンドリの尻尾"となるのだが、この名前の由来は数多くの説があり、どれも伝説の域を出ず定説とはなっていないが、その昔、酒をジュースで割った物をオンドリの尻尾(又はそれに似た様な物)でかき混ぜていた為という説もある。カクテルの定義とは、実のところ本当に単純な物なのだ。これからカクテルの事を憶えたいと思っている方は、決して頭でっかちにならず、まず最初にこの事を頭に叩き込んで頂きたい。

 

 

 

wrote.2001.11.16
第6回〜メニューに頼っていませんか?〜
店には必ずといっていい程、メニューが置いてある。カクテルの知識の無い方は、とかくその店のメニューを見て選ぶ事がほとんどであろう。しかし、ここにひとつの落とし穴がある。実際、カクテルの数など星の数ほどあると言われている。メニューに載せているのは氷山の一角、いやそれ以下の物しか載せていないのだ。知識の無い者は、とかくメニューにある物しか頼めないのではないか?という不安にかられ、メニューに列挙されたカクテルを見て、自分の最低限のカクテルの知識と照らし合わせ、知っているカクテルの中から選んだり、カクテルの名前の雰囲気でイメージを膨らませたりするなどして選ぼうとする。が、わざわざそんな狭い選択肢の中から、自分の飲みたいカクテルを選ぶ必要などは全くもって無いのだ。話は多少逸れるが、カクテルブックなどを見てみると、様々なカクテルが列挙されている。最近では、コンビニエンスストアでも販売されている簡易カクテルなどのお陰で、ジントニック・スクリュードライバー・マルガリータ・・・などは、レシピまでは知らずとも、多少名前ぐらいはご存知であろう。しかし私は、言わばこのお約束的なカクテル群に、数年前からふとした疑問を感じていた。それは、それらのカクテルブックに掲載されている様なカクテルは、何十年以上も前に欧米人が考案した物がほとんどであり、現代の、しかも日本人がいつまでもそれに固執して飲み続けているというのはおかしいのではないか?という問いであった。カクテル創生期と現代では、カクテルに使用できる材料の幅も違えば、飲み手側が求めている味覚も違ってきているはずだと思うのだ。特に、何でもそうだと思うのだが、基本的に欧米人と日本人の感覚には多少ズレがあると思うのだ。大昔に考案されたカクテルが、現代の、特に日本人の口に本当にあうのか?無論、長年に渡って愛飲されてきたという事実は、現代でも充分口に合うという事の裏返しでもあり、それだけの高いクオリティーのある証拠でもあるのではあるが。しかし、それよりももっと現代人の、特に日本人の口に合う物があるはずだという事も感じずにはいられなかった。無論、近年様々なカクテルコンペなどでは、現代の感覚で創られた新しいタイプのオリジナルカクテルが幾つも発表はされてはきているのではあるが、それらは非常に狭いカクテル界の枠の中だけしか脚光を浴びていないのが現状で、世間一般のカクテルの知識の中では、相も変わらずスーパーメジャーなカクテル、しいては昔ながらのカクテル学が、未だ幅を利かせているのが紛れもない現状だ。話を戻そう。大抵のお店のメニューでは、前述した様なカクテルしか載っていない事が非常に多いのだ。店のメニューは、その店のカクテルのある程度の選択範囲と、その店のカクテルの値段の相場を知るだけの物であり、あくまでも選択肢の一つでしかないのだ。

 

 

 

wrote.2002.8.17
第7回〜好みのドリンクの選び方〜
では、自分の好みのドリンクを選ぶにはどうすれば良いか?一番手っ取り早い方法は、何と言ってもそれはバーテンダーに訊いてみる事だ。例えば、「強くて甘いお酒を」とか、「グレープフルーツを使ったカクテルを」など。解る範囲で自分の好みを素直に言ってみれば良い。バーテンダーは、曲がりなりにもお酒を扱うプロである。好みの味を言えば、それに近い物を作ってくれるに違いあるまい。しかしこの場合、出来るだけ自分の好みをはっきり言う事が大切である。曖昧な指定は、失敗を招く原因にもなる。私もバーに立っていた頃、一番困ったのは、「何でもいいのでおまかせで」という頼まれ方であった。時間に余裕のある時は、幾つかの質問をし、その答えを参考にしながら作っていたが、後ろにずらりと客が並んでいる場合などは、ある程度の勘に頼って作った事も多々あった。ちなみに、何度も出例して恐縮だが、青山のMIXではメニューを置いていない。それは、メニューに頼らずにバーテンダーとのコミュニケーションでオーダーして欲しい志を、身をもって示しているのだ。私も実は以前、我が三宿Webもバーのメニューを廃止しようかと思った時期があった。しかし、以前も書いた様に、超混雑時に一人一人のお客とコミュニケーションを取っていては、待っているお客をなかなか捌き切れない。待っているお客の中には、コミュニケーションを取らずともメニューをうまく活用して自分の好みのカクテルを注文出来る人もいる。そういった人の為に、最低限活用出来るメニューを現在も置く様にしている。しかし、やはり最初は臆せずにバーテンダーに訊いてみる事が一番良いと思われる。逆に言うと、バーテンダーの真の真価が問われる部分はここであると思うのだ。どんな仕事でもそうだと思うのだが、マニュアル通りの事は、ある程度いけば誰でも出来る様になるのだ。そこから頭一つ抜けだそうと思うと、やはり応用の部分、すなわちセンスを問われる事になるのだ。ウチの場合、材料には惜しみなく経費を掛けている。その為、酒の知識や技術の無いど素人が作ろうとも、マニュアルに乗っ取ってさえいれば、そこそこのクオリティーの物が出来るのである。ウチのバーテンダーに常々言っている事でもあるが、メニューのカクテルのクオリティーを好評価されても、それはのバーテンダーのセンスを評価されている訳では無く、材料の良さから来る基本的な店の味を評価されているに過ぎないという事を言っている。それは、出した酒が美味いと言われると、ついつい自分の技術やセンスを評価されたと勘違いしてしまう事が多いからだ。バーテンダーとしては、やはりマニュアル通りの基本を忠実に遂行出来る事も勿論だが、オリジナルを心の底から客に喜んで貰えるかどうかだと私は思うからに他ならない。勿論、どんなキャリアや知識が浅いバーテンダーが作るオリジナルとはいえ、最低限の事さえ守っていれば、酒はそこまで不味くはならない。逆に言うと、適当な感覚で作ろうが、材料さえ悪くなければそこそこ美味い物は出来るのだ。しかし、ここからは私の頑ななポリシーになるのだが、バーテンダーなるもの、そこそこで満足してはいけないのだ。私の経験から言うと、8割美味いのと10割美味いのとでは、客のリアクションは全く違うのだ。やはり、せっかく客に数百円、ともすれば千円強のお金を頂き、その上好きな様に作っていいと言われたのなら、バーテンダーとして10割美味いと感じさせたいものだ。余談だが、私は未だにバーテン時代を知っている知人が遊びに来ると、たまにはお酒を作ってくれと嘆願される事がある。既にバーテンの現場から離れて数年経ち、現役当時も、バーテンダーとしてのキャリアなどは微かなものであった。技術的にも知識的にも、お世辞にも自慢できる程のものは無かった。しかし、未だにその様に良質なバーテンダーとして捉えられている事や、現役当時も何度か雑誌にも紹介などして頂いたのは、自己分析するに、オリジナルをオーダーされた際、出来るだけ手を抜かず、その結果たまたま多くのお客に10割美味いと感じさせた事が原因だと考えられたのだ。特に渋谷のTHE ROOMのバーチーフ・我が三宿Webのバーチーフを務めていた頃は、特にオリジナルのオーダーが多く、その度に自分なりに客が求めている物に出来る限り近い物を作る事に務め、その結果、フロッグかも知れないが、10割美味いと感じさせた確率が非常に高かったのだ。読者からすると、「勘違いなのでは?」とか「過大評価なのでは?」と疑問を持たれるかも知れないが、経験上、8割ぐらいのレベルでは客は演技で美味しいとリアクション出来るのだが、10割を超えると、絶対に演技では無理なリアクションをするのである。演技をする余裕が無い程美味く感じる為、ついつい素を出してしまうのだ。いや、出したくなってしまうのだ。それは、知り合いや、全く知らない客に囚われず見事にそうであった。又バーテンダー側の立場の話に逸れてしまったが、結局の所、好みのドリンクを見つける手早い方法は、まずバーテンダーに訊けという事である。最後にひとつ申し上げたいのが、いくらお客様といえど、礼儀の無い言動・行動ひとつでバーテンダーが作る酒の味は微妙に変わる事という事である。礼儀正しい感じのいいお客には出来るだけ美味しい物を提供したい、逆に失礼な態度や口調のお客には、ある程度の物でお茶を濁そう、と考えてしまう事もしばしばある。カクテル作りに徹するバーテンダーも、所詮は人の子なのだ。その辺も、多少なりとも考慮して頂く事も美味しいカクテルと出逢う近道であろう。次回では、自分で見つける初歩的な好みのドリンクの選び方を、私なりにアドバイスさせて頂こうと思う。

 

 

 

wrote.2003.2.21
第8回〜好みのドリンクの選び方 その2〜
今回は、前回予告した様に、自分で見つける初歩的な好みのドリンクの選び方を、私なりの感覚でアドバイスさせて頂こう。まず、カクテルの知識が無い場合、一か八か、カクテルの名前のフィーリングで頼んでしまう事がある。これははっきり言って、最近ではどこのレコード屋にも試聴出来るシステムが確立されて来ているので一昔に比べるとめっきり減ったであろう、レコードを試聴せずにジャケットの善し悪しで買ってしまうという、いわゆる"ジャケ買い"に近い。しかし、私も過去に何度も経験があるが、ジャケ買いで成功する確率は非常に低い。例えばである。Webのメニューの中に「FRENCH CONNECTION」というカクテルが載っている。カクテルの知識があまり無い、フランスのカルチャーが好きな若い女の子などには、つい目に止まってしまうカクテル名ではあるが、これはブランデーとアマレットという杏の核を使ったリキュールをロックグラスに直接混ぜ合わせた物で、アマレットの甘みはあるものの、アルコール度は非常に高い。お酒が弱い人には、一口飲んだだけでその強さに驚いてしまうであろう。こういう事がしばしばあるのだ。ではどうすれば良いか?ある程度カクテルの知識がある私であるが、未だに他店でカクテルを注文する時に使う初歩的な手段を紹介しよう。まずメニューのソフトドリンクの欄を見る。ソフトドリンクとして記載されている物は、全てカクテルに使用出来る物ばかりである。ソフトドリンクがメニューに記載されていない場合は、バーテンダーに何があるか訊いてみる。そして、置いてあるボトルをチェックする。お酒の知識が無い方は、ボトルを見渡しても何がどういうお酒が解らないであろうから、その場合はまず、どういうカクテルを飲みたいかを連想してみるのだ。例えば、アルコール度があまり強くなく、フルーティでさっぱりとして飲みやすい甘めのカクテル、という具合に。例えばこの場合、フルーツでも何のフルーツが好きか?例えば桃が好きだとしよう。桃のリキュールがあるかどうかをチェックし、解らない場合はバーテンダーにあるかどうかを尋ねる。そしてそれを、その店にある好みのソフトドリンクで割ってもらうのだ。例えば炭酸系が好みならば、ソーダやトニック、ジンジャーエールでも悪くは無いだろう。若しくは、オレンジジュースやパインジュールで割るのも良いだろう。と言った具合である。ちなみに、頼んだカクテルが好みの味に近かったが、もうちょっとアルコール度の強い酒を飲みたい時は、簡単な方法としてはそのお酒の量を多くして貰えば良いのだが、もっと酔いたいという欲求が強い時などには、それに少量のウォッカを足して貰うという方法もある。ジンやラムやテキーラなどでも勿論良いのではあるが、初心者にはまずウォッカをお薦めする。ウォッカというお酒は、ジンやラム、テキーラなどに比べて、アルコール度は約40度ちかい強いお酒であるが、癖が少なく、そのカクテルの味を損なわずにアルコール度を上げる時には打って付けのお酒なのだ。しかし量を間違えるととんでもなく飲みにくい物になるので気を付けなければならないが。このコラムの最初の項でも述べた様に、何かと何かを混ぜた時点で、既にカクテルは成立しているのだ。名前が付いている物だけがカクテルでは無いのだ。カクテルとは非常に単純な物なのだ。まずは、中途半端に憶えているカクテルの名前を頭の中から一切排除し、真っ白な状態にするのだ。そして自分が飲みたい物を本能的にイメージし、知識が無い場合は、的確にバーテンダーに伝える。最初は、お酒という響きが邪魔をしてどうも難しく考えがちなのだが、簡単な事を言えば、お酒が入っていないフルーツシロップと考えればイメージし易いのではないか。前述の例を挙げると、ピーチのシロップを炭酸で割った物とか、オレンジジュースで割った物とか。往々にして、カクテルの知識が無い人=お酒があまり強く無い人という図式が成り立つ確率が非常に高いと思われる。そういう人は、まずは飲みやすい、フルーツリキュールのソフトドリンク割りという頼み方が、手っ取り早いのではないかと思う。間違いも非常に少ないのもこのパターンでもある。何のフルーツと何のジュースを割れば美味しそうか?これならば、カクテルの知識が無い人でもある程度連想し易いのではないかと思う。我が三宿Webには常時、フルーツのリキュールだけで約40種類近く置いてある。例えば、苺・木苺・ブルーベリー・レモン・桃・バナナ・ライチ・林檎・メロン・スイカ・すもも・さくらんぼ...など。ソフトドリンクもクラブのバーとしては非常に豊富に扱っており、100%フレッシュのオレンジ・グレープフルーツを始め、パイン・グレープ・ピーチ・レモネード・カルピス・チョコレート・ジャワティーなども置いてある。前述の方法で、是非一度自分の好みのカクテルを創造して頼んでみて頂きたい。勿論、迷った時はバーテンダーに手助けして貰えば良い。何から何までバーテンダー任せにするのも失敗しないカクテル選びのコツではあるが、それではいつまでたってもカクテルに対しての知識やスタンスは変わらない。そして実のところ、自分の好みは自分が一番わかっているものなのだ。

 

 

 

wrote.2005.2.8
第9回〜カクテルブックの薦め〜

前述したコラムの内容を実践してみた方なら、以前よりもカクテルに対する興味も深まった事であろうかと思う。そんな方にお薦めしたいのが、カクテルブックを購入してみる事だ。ウチでのバーテンダー志望のスタッフにも、まずはカクテルブックを一冊持たせ、読ませる様にしている。一冊目に購入するのであれば、巷に溢れかえる無数のカクテルブックの中でも、日本バーテンダー協会が監修している「NBAオフィシャル・カクテルブック」をお薦めしたい。同書はかなり本格的な視点で、バーテンダー及びカクテルの基礎知識を網羅している。カクテルについての文献や、ポピュラーな同じカクテルのレシピなどにしても、カクテルブックによって微妙に違ったりする事は珍しくないのだが、全てに関して、同書の内容が基準と考えても良いであろう。同書の中で私が必ず読んで頂きたいのが、同書の一番最初の項の「カクテルの基礎知識」という部分なのだ。結構なページ数でもあるし、あまりカクテルの知識の無い方には、最初はちんぷんかんぷんかも知れないが、まずは大筋で結構なので、カクテルとは?酒とは?という定義を少しでもいいので理解して欲しいのだ。興味のある方にしてみれば、読んでいくうちに引き込まれ、少しでも小さな発見や再確認がある度に、酒及びカクテルというものに対し、更に興味が深まっていくのは間違いない。前述したウチのバーテンダー志望のスタッフには、最初は全てを理解出来なくとも、ここをまずは何度も読ませる様にしている。レシピの項は敢えて最初は読ませたり憶えさせたりはしない。私もバーテンダーを始めてから、「カクテルの基礎知識」の項を何十回という程読み直しているが、私が思うに、バーテンダーとして一番重要な事は、沢山のカクテルのレシピを憶えているという事よりも、酒及びカクテルというものの基本的な知識を知っているという事なのだ。カクテルのレシピなどは所詮、応用の知識でしかないのだ。何事に於いても言える事だと思われるが、まずは基本あっての応用なのだ。勿論バーテンダーを目指していない方にも、酒というものの基本知識を多少でも知っていれば、自分の好みのドリンク(カクテル)を考える上で、少なからず役に立つはずである。そしてお薦めの本はもう一冊ある。講談社から出ている「世界の名酒事典」という本だ。これはカクテルブックではないのだが、ウイスキー・ブランデー・ジン・ウォッカ・焼酎などの蒸留酒は勿論の事、ワイン・日本酒・ビールの醸造酒やリキュールまでも網羅した唯一の酒の事典である。現在購入出来る酒・一万数千点を全てカラー写真付きでラベル・値段・寸評まで掲載している。店に入ってどんな酒が常備してあり、その酒がどの様な酒かがある程度わかる様になれば、カクテル選びが更に容易に、しかも楽しくなるのは間違いないはずである。好みのカクテル考以外にも、ここ数年急増している、自宅でワインや日本酒・焼酎などをご愛飲されている方にとっては、非常に重宝する一冊であろう。今回はカクテルブックの購読を薦めたが、これはカクテルや酒に対する含蓄や知識をただ増やせと言っているのでは決してないのだ。何度も言う様だが、一番大事なのは、知識を吸収しても決して頭でっかちにならず、カクテルとは?酒とは?という基本的な部分を理解し、感じ取れればそれで充分なのだ。それは勿論、バーテンダーを目指す人にも同じ事が言えるのだ。

 

 



wrote.2007.2.7
第10回〜氾濫するオリジナルカクテルについて〜
ちょっとした酒に力を入れているお店ならば、いや、大して力を入れてないお店でも、必ずと言っていい程オリジナルカクテルなるモノが存在する。それを多数作って、定番のカクテルよりもプッシュしている店もある。それは大変いい事だとは思う。既存のカクテルなどよりも、その店の客層が好むカクテルの趣向というモノが必ずあるであろうし、前も書いたとは思うが、オリジナルカクテルというのは、バーテンダーの腕の見せ所でもあるのだ。それを経験・知識・センスを使って考えるという作業は、バーテンダーにとって実に重要な作業でもあるのだ。だが、安易なネーミングのオリジナルカクテルを目にする事が多々あるのだ。私の個人的な概念から言わせて貰うと、オリジナルカクテルのネーミングだけでもその店のバーのクオリティやセンスがわかるのだ。

私の場合、数々のオリジナルカクテルはあるが、昔は若気の至りもあって、わかりやすくネーミングを考えていたりもしたが、途中から中途半端にネーミングを付けるのをやめたのだ。それは、オリジナルカクテルにネーミングを付けるという作業は、物凄くセンスがいる作業だと痛感したからなのだ。一歩間違えると、せっかくのカクテルのクオリティーも台無しにしてしまうぐらい重要なモノなのだ。あと、よその店でのオリジナルを気に入った客が、オリジナルとは知らずに名前をインプットし、ウチでもたまにあるのだが、聞いた事もないネーミング・レシピのカクテルを我がモノ顔で注文してくる事があるのだが、無論そんなよその店のオリジナルなど知る由もなく、困らされる事もある。

あと、オリジナルカクテルをやたらとプッシュしている店は、基本的な酒のクオリティーが大した事がない確率が非常に高い。それは、定番のカクテルでは勝負出来ない故、オリジナルに頼ってお茶を濁しているとも言える。ちなみにウチは、取材などでお薦めのカクテルは?と訊かれたら、ナンの制約も無ければ、よくジントニックを出していた。皆さんもご存知の通り、ジントニックというカクテルは、もう定番中の定番とも言えるカクテルなのだ。その定番中の定番とも言えるジントニックを飲んで貰えば、ウチのカクテルのクオリティーはすぐにご理解頂けると思うからなのだ。裏を返せば、中途半端なカクテルを出すよりも、バーの全体的なクオリティーの高さを暗に誇示出来るという考えからの事でもあった。

我が三宿Webでは、幾つかの私が若い頃に考案したカクテルも掲載してはいるが、その中でも、オリジナルフレッシュカクテル(ORANGE or GRAPE FRUITS)などは先程の理由もあってこういう名前を付けたのだ。ちなみにこのオリジナルフレッシュカクテルの二種類と、今まで私が考えたオリジナルカクテルでもナンバーワン人気を誇る"MISHUKU"の三つは、一度飲むとリピート率が非常に高いオリジナルカクテルなのだ。中でも"MISHUKU"は、男性からも女性からも大人気なカクテルだ。

元々"MISHUKU"というカクテルは、Webの前に働いていた店、渋谷THE ROOMでバーチーフをしていた頃に考案したカクテルで、聞くところによると、14年経った今も未だ同店のメニューには掲載されているらしく、人気カクテルの一つらしい。店に携わっている人達が京都の人が多かったので、当初は"KYOTO"という名前で誕生した。その頃からもかなり人気があったのだが、レシピを思い付いた時に、たまたま当時日本では三人しか居なかったというバーテンダーのB級ライセンスを持っている人に、「こういうカクテルを考えたんですが、どうですか?」とお伺いしたところ、「世界的に見てもそういう組み合わせのカクテルはないし、全ての材料がとても相性の合う組み合わせだね。」とお墨付きを頂いたカクテルなのだ。確か私が本格的にオリジナルカクテルを考えた最初のカクテルがこの"KYOTO"だ。その後Webに移り、レシピも大人向けにアレンジして、"MISHUKU"という名前でリメイクした。

余談だが、KYOTOを考案したのが21歳の時、MISHUKUにリメイクしたのが23歳の時だったのだが、今となっては余りにも安易にネーミングしたものだと恥じた事もあった。今もし同カクテルのネーミングを変えるとしたら、"SUMIRE"にしたであろう。ネーミングの変更も本気で考えた時期もあったのだが、余りにも定着し過ぎてしまった為、変更するのをやめたのだが、今となってはKYOTOやMISHUKUというネーミングは、ちょっとお寒いネーミングだと後悔の念もある。

名前がないと次に頼みにくいなどの難点もあるのではあるが、私の観点から言うと、オリジナルカクテルのネーミングは、付けるとしてもシンプルでわかりやすく、センスのある名前にしなければという哲学が存在する。特に声を大にして言いたいのが、オリジナルカクテルのネーミングに、ユーモアやジョーク的要素は絶対的にタブーなのだ。たまにそういうネーミングのオリジナルカクテルを目にする事があるが、私の哲学からすると、全く持ってナンセンス。そのバーテンダーのバッドセンスを露骨に表しているモノとしか思えない。しかも往々にして、そんなオリジナルカクテルが抜群に美味しいという事はまず有り得ないのだ。残念ながら、これは私が経験している範囲では100パーセントと言ってもいいのだ。

カクテルにネーミングするという事は、ある意味子供に名前を付けるぐらいの重要な事なのだ。それぐらいカクテルのネーミングというのは、そのカクテルにとって非常に重要なモノなのだ。
 

スタッフ急募!!
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